**confection**
「ねーちゃん!!るぅ送ってくるよ?」
「えっ?あ…」
勇磨の声に、分かりやすくハッとしたももが顔を上げる。
本当に自分の世界に入り込んでいたようで、まさに覚醒でもしたような表情だった。
物凄くそんなももが気になりながらも、ここは時間をかけている場合ではない。
後ろ髪の引かれる思いだが、そこはグッと我慢した。
「じゃあ、今日はありがとうな。また…」
明日。と続けようとしたが、思い止まった。
なぜそうしたかは、自分でも分からない。
でも何故か、そうしてしまった。多分それは、俺なりに空気を読んだ…という言い方がしっくりくるのかもしれない。
「あ、じゃあ私も付いてく」
「…え?」
そんな考えの中、全くの予想外の言葉に目を瞬かせた。
確かに状況を考えれば、そうなるのも無理もない。
俺はももの友達であって、勇磨とおじさんとは今日知り合った訳であって……。
そんな2人に任せる程、ももはそんな考えすらしないだろうし。
「んじゃあ、ねーちゃんも行こうよ」
「なんで勇磨に決められなきゃいけないの」
「え?だって俺るぅの友達だから」
「るぅ…って、いつの間にそんな仲良くなってんの?」
「ね〜?」
ほのぼのとするような2人のやり取りに、苦笑いするしかできなかった。
よくよく考えてみれば、勇磨が気を回してくれたのかもしれない。
ももがどちらかと2人きりにならないように。
これは俺の勝手な憶測にしかすぎないけれど、頭の回転の早い勇磨を考えると、そう思わずには居られなかった。