**confection**
「堂々としているし、君は責任感もある。今の若い子達は、責任感と言う物が全くないからねえ」
よく分からないけれど…誉められているんだろうか。
「だから気に入ったよ。将来うちの会社に来てくれたら、間違いなく絶対に取らせてもらうよ」
「あ…ありがとうございます…」
…親父…お袋……俺の就職先が………決まりました……。
しばらく他愛もない話をしていて、いろいろな事を知った。
ももの親父さんが、誰しもが知る某有名企業の重役である事。そしておばさんも、同じくそこの秘書をしていた事。
勇磨がスポーツ万能で、武道家でもあり、剣道は有段者でもある程の腕前で、各界ではちょっとした有名人である事。勿論、高校はスポーツ推薦で、ももと俺と一緒の高校を目指している事。
なんだか圧倒されてしまうような唯ノ瀬家の面々に、もしかして凄い人たちと知り合いになっちゃったんじゃ…なんて思ってしまう。
いや、思わないヤツなんていないだろ。ってのも愚問で。
その話を聞きながら、なんだかその話をされるのが嫌そうだったももが、やっぱり一番気にはなっていた。
ももが話したくない事は、無理に聞き出すような事はしたくない。
でも今回は、不可抗力にしろ何だか聞いてしまった事への多少の罪悪感が募った。
ものの数分たらずで、目的の場所に着いてしまった。
なんだかやたらと勇磨が興奮していたが、気にしないでおく事にする。
「明日電話する」
「あ…あぁ」
ポツリと小さく囁いたももに、小さく答える。
多分きっと…聞かれたくないのだろう。
今回の事で、少なくともいろいろな事を知った。
言い方は悪いかもしれないが、ももが縛られている事。
そのせいで、俺に対してこんな風に言ったのだろう。
本当なら、ももが家に帰ったタイミングで、俺から電話したいのが本音なんだけど。