**confection**
「そんな事ねーよ。てか、昨日ありがとうな」
話題を変えようと、話を無理やりに転換する。
実際、きちんとお礼も言いたかった事もあるが、ももの昨日の様子が気になっていた事もある。
一瞬たりとも、その表情の変化を見逃したくないんだ。
「え?ううん、こちらこそありがとうだよ。なんか付き合わせちゃったし……変なとこ見せちゃってゴメン」
言いにくそうにそう答えるも、目を合わせないように俯くももに、胸が心配に支配される。
なんでそんな顔すんだよ。
なにを我慢してんだよ。
俺じゃ力にはなれねえのかよ。
言いたい事は、溢れる程ある。
でも、ももが心を開かないのなら、外野がとやかく何を言っても無駄にすぎない。
それは、ももにとっては迷惑だろうし、余計なお世話にしかならないんだ。
「いや。勇磨おもしれーな。まじで遊びに来るつもりなのかな」
これは、本当の気持ち。
内心、勇磨が遊びに来る事が、実は楽しみだったりする。
ももに似て素直で、頭の回転が早いからよくキレる。
なんだか本当の自分の弟のようで、可愛がってやりたくなったのも本音だ。
「帰り道に、るぅの連絡先聞くの忘れたって嘆いてたよ。私に連絡先教えろってしつこかったけど、勝手に教えたらダメだからって断ったんだけど」
「そうなのか。なんだ、教えてくれて良かったのに」
「本当にいいの?絶対るぅのマンションに泊まりに行くよ?」
泊まりに行くと言うももの答えに、思わず吹き出した。
確かに、勇磨はそう表現した方が早いだろう。
遊びに行くなんて言いながら、泊まって行く気満々なんだろうな。
「いいよ。別に困る事ねえし」
なんだかももの家族と繋がりができる事が、純粋に嬉しかった。