**confection**
数分もしない内に、バスがやって来た。
俺とももの他に乗客は殆ど居なくて、広々とした一番後ろの席へと着く。
窓際にももを押し込めて、通路側に俺が座ると、バスがゆっくりと動き出した。
心地良い揺れに、欠伸が連発する。
ももが何やら携帯をいじりだしたので、気にせず前を眺めた。
どんなに踏ん張ってみても、瞼はどんどん重くなる。
抵抗しようにも、強い睡魔は飛んでいってはくれない。
それどころか、ふわりと濃くなったももの甘い香りに、誘われるようにして目を閉じていた。
甘い砂糖菓子のような香りと、心地良い揺れ。
なんだか物凄く幸せな気分に満たされて、気持ちが軽くなるようだった。
どれくらい時間が経っただろうか。
時間にすれば、バスの停留所2つ分だろうか。
それでも十分に長く感じる程、深い眠りに入っていた俺は、揺さぶられている事にハッとして目を開けた。
「…ん?あれ……」
目を開けると、景色が全て真横に見える。
………んん???
一瞬訳が分からなくて、自分の状況に気付いた時には勢い良く姿勢を立て直していた。
「おわっ!!ご、ごめん」
「よく寝てたね?もう少し寝かせてあげたかったけど、もう着くよ」
「あ…あそう…」
おおう…。びびった〜〜。
どうやら俺は、ももの肩に寄り添うようにして寝ていたらしい。
ドキドキと暴れる心臓を宥めながら、恥ずかしさでどうにかなりそうだ。
あんなに浅い眠りにしかつけなかったのに……。
そう思うと、自然と深く眠れた自分に、やっぱりももに惚れてるんだなあ…なんて呑気に考えていた。