**confection**
「俊はいつも底無しだよな…誰も付いてけねえよ…」
宗太がポツリと言ったが、俊以外は納得と言う顔をしている。
まあこれも、当然と言えば当然で、見慣れた光景だったり。
ゲームをしたり、龍雅に絡まれたり、宗太にニヤニヤされたり。
いつもと同じで、いつもと違う。
まさか俺の誕生日を覚えていたなんて、予想もしなかったから。
それだけでもう、十分だった。
十分嬉しかった。
「俺、ちょっと休憩…」
少し酔いを醒まそうと、1人輪から抜け出してミネラルウォーターを呷る。
美春とももは、2人で男性陣を眺めたり、美春のノロケ話に花を咲かせているようだ。
ももの笑顔に、思わず見とれてしまう。
美春に向けられる笑顔を、俺に向けてしまいたい。
できればそのまま、俺だけに笑って欲しいのに。
どうやら俺は、相当酔っているのかもしれない。
いつもに増して、ももへの気持ちが増幅しているようだ。
2人きり…なんて贅沢は言わないけれど、自分の誕生日に好きな女と過ごすって、めちゃくちゃ嬉しい。
今までそれなりに彼女も居たけれど、誕生日にこんな気持ちになんてなった事すらなかった。
その前に、一緒に過ごすどころか、気持ちの問題もあるんだけど……って、やっぱ俺って最低だよな。
自分で初めて人を愛おしいと感じる気持ちを知り、改めて自分の最低さが身にしみる。
そんな簡単にうまく行く訳がない。
時間が経てば、両想いだなんて、そんな風に考えている訳ではない。
これはきっと、長期戦。
結局俺って、恋愛初心者??
どっちにしても、今は慎重に、ただそばに居れるだけでも、幸せだと思わなきゃダメな気がした。
まだ俺は、迷っていたから。
人を好きになる事に。そんな権利が俺にはあるのか?と。