**confection**
なんのためにここまで来たのか。
なにをしたかったのか………。
自分のやりたい事…それはあいつの夢を叶える事。
俺が、代わりに。
あいつの見たかった世界を、夢にまで見た世界を、俺が見てみたかった。
代わりにすぎないけれど、叶えたかったんだ。
飲み過ぎでもないのに、体がダルく感じる。
体が熱くて、なんだか眠気もある。
「るぅ?大丈夫?」
「ん〜…うん」
ああ…そう言えば、俺寝不足だったんだっけ。
そっか…すっかり忘れて飲んでた。
「うんって…大丈夫じゃなさそうだよ」
心配そうな呆れたようなももの声に、意識が段々とふわふわしてくる。
なんだよ、俺には笑ってくれねえのかよ。
「…もも」
「ん?」
重い頭を上げて、ももを見つめる。
ようやく視界に捉えたももが、霞んでよく見えない。
もっとハッキリと見たいのに、なんだかももが凄く遠くに居るように感じる。
「ちょっと」
「え?なに?」
もっと近くで顔が見たくて、チョイチョイと手招きすると、ももがすぐ近くまで膝立ちでやって来る。
そのまま隣に腰を降ろすのを確認した俺は、素直に隣までやってきたももに顔を緩めた。
そしてそのまま、もも自身に吸い込まれるように、無意識のまま顔を覗きこむようにしてももに近付き、両腕を伸ばしていた。
ももの驚いた顔を、間近で見た。
甘い香りと、大きな瞳。いちごジャムのような、唇。
キス、してしまおうかと思った。
ギリギリまで近付いた所で、俺はプツリと意識を失った。
キスはしてないのか、それとも……。
なんだかやたらと幸せな気分のまま、俺は夢の世界へと飛び立っていた。