**confection**




なんだか物凄く、気持ちが良い。


重石を乗せたように、ずっしりと重かった気持ちが、徐々に解されていくようで。



優しく頭を撫でてくれる感触に、胸がポカポカと暖かくなる。


甘い香りに、ももの顔が思い浮かぶ。




なんだ、この手はももか……。



ももの手が遠ざかると、優しくももが微笑みかけてくる。


その顔に、たまらず手を伸ばす。


でも何故か、届きそうで届かない、なんとももどかしい距離。



好きって伝えたいのに。

今すぐ腕の中に閉じ込めて、ももが苦しいって言う程抱きしめたいのに。



なのに、届かない。



切なさが胸を支配して、いっぱいになる。



なんだよ。好きも言えないのかよ。

どうして言えないんだよ。

気持ちすら伝えられないのか……?




「るぅ?」



いまだ微笑みかけていたももが、名前を呼ぶ。


でもそれは、なんだかやけにリアルで、再び名前を呼ばれる頃には、眩しい光が視界いっぱいに広がっていた。



「るぅ、そろそろ起きないと、夜眠れないよ?」



「………。」




あれ?ここは……って、夢?




「るぅ寝ぼけてるの?」



「………。」



ももに真上からのぞき込まれる体勢に、状況が処理できずに固まる。



なん…で……もも?


………夢…?ん?



ゆっくりと徐々に解凍していく頭が、意識をハッキリとさせていく。

甘い香りに、夢の中のももが被った。




って………え!?

な、なんで!?まさか、俺…俺か!?
< 143 / 249 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop