**confection**
『続きまして、新入生代表の言葉になります。代表の方、前まで出てきて下さい』
新入生代表ね。どんな奴が挨拶するのやら。
どーせ、瓶底眼鏡なんかしてそーな奴なんじゃねえの〜。
何て考えながら大きな欠伸をした。
そんな俺の横を、小柄な人物が通り過ぎ、甘い香りが漂って俺まで届いた。
――…は?……もも?え?
呆然とする俺を余所に、周りがざわつく。
そのざわつきは、ももが舞台へと上がった頃には、大きなモノへと変わっていた。
下品な声で下品に指笛を吹く輩まで出てきて、何だか無性にイラつく。
しかし、そんな事も全くお構いなしに、ももは堂々と挨拶を始めた。
最初は冷やかしていて先生らにもどーしようもなかったざわつきは、段々と静かになっていく。
ついさっきまでイライラしていた俺も、気が付いたら釘付けになっていた。
詩を詠むように流れるような挨拶に、人を引き付ける澄んでいて甘い声が、みんなを釘付けにした。
何か……やっぱ変だ。胸が苦しい。
ももの挨拶は、ものの数分といったものだった。
ペコリと小さな頭を下げ、そのまま舞台を降りて元居た場所へと戻ってくる。
舞台を降りた途端、見えなくなっちまったけど。
どんなけちっせんだよ。
続きざまに、そのまま校長の話らしい。
やっぱり俺は、ただポカーンと舞台を眺めているだけだ。
さっきも感じた、胸に残る違和感の意味を考えながら、再び俺の横を甘い香りが通り過ぎた。