**confection**
自分の左耳に突っ込んである石のピアスを、おもむろに取り外す。
そしてそのまま、小さな箱の中からももからもらったピアスをつまみとる。
首を傾けながら、そのピアスを耳に取り付けた。
シルバーで少しの重量感が耳朶を揺らす感覚が、なんだか嬉しい。
「わー!!似合うよるぅちゃん!!」
「自分じゃ見えない」
「そりゃそうだろう!!鏡ねえの?」
龍雅の声に、美春がニコニコと鞄から鏡を取り出す。
そのまま俺に手渡してくれて、自分の左耳を映し出した。
「お…うん、いい」
「良かった〜。うん、なかなか似合ってるじゃん」
「ありがとうな。大切にする」
あー、ヤバいヤバい。嬉しすぎて顔が緩む。
頬がむず痒い感じがして、それを必死に堪える。
しばらくじっと見入ってしまいそうになり、速やかに美春へと鏡を返しておく。
そんな俺の様子を、熱心に見つめていたももに、恐る恐る視線を向けた。
どうやらももは、ずっと俺の左耳を見ていたらしい。
嬉しそうなその顔に、ドキリと胸が音を立てた。
「もも、見つめすぎだろう」
「え?だって、予想以上に似合ってるから」
苦笑いしながら言う宗太に対して、視線を俺の耳から離さないままももが言う。
そんなに熱心に見つめられているせいか、両耳が熱くなってきた気がする。
それを隠すように、ももの視線にあるピアスにそっと触れた。
そこにある確かな存在感に、口元を引き結ぶのに必死だった。