**confection**




自分の左耳に突っ込んである石のピアスを、おもむろに取り外す。


そしてそのまま、小さな箱の中からももからもらったピアスをつまみとる。



首を傾けながら、そのピアスを耳に取り付けた。



シルバーで少しの重量感が耳朶を揺らす感覚が、なんだか嬉しい。



「わー!!似合うよるぅちゃん!!」



「自分じゃ見えない」



「そりゃそうだろう!!鏡ねえの?」



龍雅の声に、美春がニコニコと鞄から鏡を取り出す。


そのまま俺に手渡してくれて、自分の左耳を映し出した。



「お…うん、いい」



「良かった〜。うん、なかなか似合ってるじゃん」



「ありがとうな。大切にする」




あー、ヤバいヤバい。嬉しすぎて顔が緩む。



頬がむず痒い感じがして、それを必死に堪える。


しばらくじっと見入ってしまいそうになり、速やかに美春へと鏡を返しておく。


そんな俺の様子を、熱心に見つめていたももに、恐る恐る視線を向けた。



どうやらももは、ずっと俺の左耳を見ていたらしい。


嬉しそうなその顔に、ドキリと胸が音を立てた。



「もも、見つめすぎだろう」



「え?だって、予想以上に似合ってるから」



苦笑いしながら言う宗太に対して、視線を俺の耳から離さないままももが言う。


そんなに熱心に見つめられているせいか、両耳が熱くなってきた気がする。



それを隠すように、ももの視線にあるピアスにそっと触れた。



そこにある確かな存在感に、口元を引き結ぶのに必死だった。
< 172 / 249 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop