**confection**
あちゃー。なセリフに、おばさんは楽しそうに明るく笑う。
あまりにもあんまりなお世辞なセリフにも、微動だにもしないおばさんは、やっぱり…じゃなくて、天然なのだろう。
「やだぁ〜ありがとう♪みんなもものお友達?お母さん羨ましい!!ハーレムね!!」
「僕、神崎龍雅です!!こいつが宗太で〜こっちが美春のダーリンの俊でえ〜」
「ちょっと龍ちゃん!!私が俊ちゃん紹介するつもりだったのにい!!」
「え?おおっとー、それは失敬失敬!!」
まとめて龍雅が紹介してくれたせいか、随分と短縮されてしまった。
そして俺も、挨拶をするタイミングすら掴めなかった。
まだ雑談を交わす龍雅ともものお母さん、そして美春以外は、会話に混じる事もできず、ただ会話を遠巻きから見守るだけ。
そんな中でも、一際大人しいももが、俺は気になって仕方がない。
やっぱり表情を消してしまったような、感情すら表に出さずに、ただ無表情に目だけを俯かせるももに、胸がモヤモヤとしだす。
面倒くさそうとか、鬱陶しそうとか、そんなモノではない。
なんだかやたらと、頑なに意識を向けないようにしている。そう感じた。
「じゃあもも、そろそろ行こうか?」
「…うん」
話を区切るように、そうももに言葉を向けたおばさんに対して、ももは視線も合わせる事なく頷く。
そこでようやく、ももが帰りたくなさそうに頷いたように感じた。
何か言葉を掛けなくては、と思ったものの、ももの「じゃあ、またね」の一言で、その思いも叶わないまま終わってしまったのだった。