**confection**
溜め息まじりの情けない俺の言葉に、俊が爽やかに笑顔を見せる。
なんだかそれが、やけに今は染みる。
苦虫でも噛んでしまったかのように、俺はきっと酷い顔をしているに違いない。
「まあ、反省してそう思ってんなら、儲けモンじゃん」
「儲けモン…?」
「俺が経験してない事を、るぅは経験してる。それは経験したモン勝ちだし、それだけ分かってんなら、次にいかせるだろう」
なんだか軽く言うが、俺にはずしりとやけに重く感じた。
確かにそうなのかもしれない。
人生なんて、経験したモン勝ち。
でも、それを次にいかせるかいかせないかなんだ。
「俺も、美春に浮気されないよう頑張らねば……」
「いや、そこ頑張る必要あんのか?」
俊はそう言うが、俺には到底美春が浮気をするなんて思えなかったし、なによりも別れる事があるなんて想像もできなかった。
でも、なにがこの先起きるかなんて、分かるなら神様ぐらいなんだろうな。
「あ〜…不安でたまんね」
「でもま…そんくらいの気持ちでいても、いんじゃないか?」
「……なんで?」
怪訝そうに眉を寄せた俊に、俺は口を開けた。
実は恋愛初心者だったらしい俺なりの、そんな小さな思いだ。
「美春も同じように不安だと思うぞ。だから、相手の事を想う事ができるんじゃないか?好きだって」
なんとも思えないような相手なんて、好きとは思えない。
相手の事を想うからこそ、不安になったり苦しくなったり、愛おしく思える度合いが大きいんだ。
恋愛初心者なりの、片思いの淡い経験からの話な訳なんだけど。
そんな事をかいつまんで言った俺に、俊はしばし俺の顔をじっと見つめた。
なんか可笑しな事でも言ってしまったのかと不安になってきた所で、ようやく俊がポツリと口を開けた。
「瑠衣斗と書いて恋愛アドバイザーと書く」
「書かねーよ」