**confection**
「るぅは金髪だから、イソギンチャクでもいいね」
「…そりゃまた、どこでどう繋がったのか激しく謎だな」
ひとまず通り道で立ち話をするのも何なので、その場を離れるようにして自分の席へと向かう。
足を踏み出した途端、背後でももがさっきの女子と挨拶をしている声が届き、思わず耳がダンボになった。
でもすぐに後ろからももが付いてくる気配がして、くすぐったくて仕方がない。
背中にぶつかってきたももの感覚が、まだハッキリと残っているようだった。
机に着き、無造作に鞄を投げ出す。
ひとまず席に着いて落ち着くと、鞄を枕に頭を押し付けた。
あ〜…眠い。
寝ても寝足りねえ……。
「まだ来たばっかりなのに、また寝不足?……ん?何だろ……」
左隣から聞こえてきた声に、薄く目を開ける。
その視線の先には、丁度ももが机から何かを取り出した所だった。
不思議そうなその横顔を眺めていると、ある事に思い当たり思わずガバッと起き上がる。
まさか、それって……。
折り畳まれたメモのような物を手にしながら、突然勢い良く起き上がった俺に驚いた顔を向けたももが、身を固めたまま見上げている。
「……るぅ?どうかした?」
遠慮がちに聞くももの声が、耳を素通りする。
自分が今現実に居ないような、そんな感覚だ。
嫌な予感に胸があっという間に支配されて、どす黒いドロドロとしたモノがなだれ込む。
思い違いであって欲しい。
どうか、この予感が当たらないでいてくれたら……。
でも現実は、嫌な予感程当たってしまうように出来ているんだ。
それは、誰よりも俺自身、経験済みだからよく分かっている。
「…早弁、買うの忘れたな〜…って」
でも、こうしてやっぱり気持ちを誤魔化す事でしか、俺はももには接する事ができないんだ。