**confection**
みんながあまりにもいつも通りで、逆にももが少しいつもと態度が違う。
もじもじするような…いや、少し気まずそうな。
聞いてほしいのか。
それとも、今は一人で考えてたりするのか。
きっと、後者なんだろうけど。
なぜそう思ったのか。
ももは自分の話をめったにしないから。
自分で自分なりに取り込んで、自分で解決しようとする。
だから、聞いてはいけないんじゃないか、って思うんだ。
ももが話したくなれば、きっと話してくれるから。
そう、思っていた。
思っていたんだ………。
それが、取り返しのつかない事になる。
出口の全く見えない迷路に、迷い込んだ事にすら気付いてない。
そんな中、少しずつ大きな乗り越える事のできない壁が近付いているなんて、全く予想もしなかった。
「ももの半分でいいから、俺もモテてえなあ〜」
「ちょっと。覗き見してて何言い出すの。やめてよね」
「俺だけじゃねぇよ〜。許してくれよ〜」
龍雅の戯言も、ももの怒った声も、呆然とする俺には届かない。
今ですらこんな状態なのに、これ以上の事とかあんのか……?
だとしたら俺…さすがに折れる。
にぎやかに教室へと戻る中、俺はガックリ肩を落として歩いた。
「るぅ姿勢悪いよ?余計ガラ悪い」
「…ももは背ぇ伸びねえな」
こんな考えが、可愛いモンだったと思える程、見上げた先も見えない壁が近付いていた。