**confection**
教室には、ほとんどの生徒はおらず、俺達だけが残っている。
開け放った扉の向こうに、栗本と並んで出て行ったももの残像が、幻のように浮かんで消えた。
「あいつらどこまで行ったんだ?」
「ん〜?予想もつかねえ…」
龍雅の言葉に答えた俊と、俺も同意見だ。
ガタンと音をたてて、宗太が後ろ向きに俺の前の席へと座る。
それに続いて、俺を囲むようにしてそれぞれが席に座った。
「探さなくていいのかよ。るぅ」
目の前の宗太が、怪訝そうに俺を見つめる。
宗太の言葉は、ごもっともだ。
でも、今の俺にはそんな資格ないんだ。
「いや…いいんだ」
自分で言っておきながら、胸がズキズキと痛み、誤魔化すように自嘲的な笑みを浮べた。
そんな俺の言葉に、納得いかないように溜め息を漏らしたのは、龍雅だった
「んっとによぉ…何をそんなにグダグダ悩んでんだ?好きなら好きでいいじゃねえか!!」
「………」
「何か理由があるのか?それともただの意気地なしか?」
ももが言った事、正解だったな。
龍雅の言葉に、やけに冷静にそう思った。
実は真面目で、女だけじゃなくてツレも大切にする。
龍雅って、そーゆう奴なんだよな。
「俺がこの学校に来たのは、…本当にここに来たかった奴の夢を、代わりに叶えたかったからなんだ」
感情もなく、そうポツリと言葉が飛び出していた。
そして、過去の記憶が、頭に鮮明に浮かび上がった。
「恋なんてするつもりなかった……。する資格なんてねえから。俺が…そいつの夢を奪ったんだ」