**confection**
胸がキリキリと痛んだ。
頭が何かで締め付けられたみたいに、きつく響いて痛む。
俺の言葉に、きっとみんなドン引きだろうな。
なんて、やけに他人事のように思えた。
「どう…ゆう事だ…?」
眉を寄せた宗太が、ポツリと言葉を紡ぎ出す。
そんな宗太に、もう黙ってはおけないな、なんて思い、ゆっくりと口を開けた。
「弟が居たんだ、俺。そいつの夢が、この学校通って、こっちに引っ越しちまった好きな奴を、驚かせる事だったんだ」
うまく言葉にできなくて、時々止まりながらも、ゆっくりと話をする。
今でも昨日の事のように、鮮明に思い出せるあの光景。
最後にあいつが見た景色は、どんな景色だったのだろう。
「病気って分かってたのに、俺は強く止めもせずに、来年から通う中学が見たいって言うあいつの頼みを引き受けた。…そしたら死んだ」
あの時、強引にでも断っていれば。
もっと、あいつの体の事を考えてやれれば……。
違う未来が、広がっていたのかもしれないのに。
「どう調べたか知らねーけど、病室からここのパンフレット出てきて。それで、ここに来ようって決めた」
みんなが今、どう思ってるかなんて全く分からない。
人それぞれ、思いは無限に広がる。
こんなタイミングで、話すつもりもなかった事を、まさか話す事になるなんて。
でも、もう黙ってはおけない気がした。
こんなにも、俺を気にかけてくれる奴らに、話さないでおく事の方が失礼に思えたからだ。
「あいつの夢を奪ったんだ。俺に恋愛なんてする資格ないんだよ。ましてや、人を好きになるなんてな」
決めつけかもしれない。
でも、少なくとも俺にはそう思えたから。
あいつの夢に便乗するようで、そんな恋なんて、する権利ない……。
「だから…いろいろ決めかねてた。なんのために、ここまで来たんだって。悪いな、アホだろ」
そう言って顔を上げた先で、真剣な顔をした龍雅と視線が絡んだ。
その目は、何故だか怒っているようだった。