**confection**
「俺……」
ポツリポツリと、言葉を吐き出す。
言葉を区切り、大きく息を吸い込んだ。
みんなの視線が、俺に集まるのが分かる。
でも、どの視線とも絡まる事はなかった。
「ももが好きだ…。めちゃくちゃ」
今ある思いを口にする度に、気持ちにぶら下がっていた重石が少しずつなくなっていく。
本音を口にする事で、こんなにも気持ちが軽くなるなんて、思ってもみなかった。
「取られたくねえ」
そんな言葉に、周りが笑った気配がした。
自分の頑な性格にも驚いたが、ここまで忍耐強く粘るコイツらにも驚きだ。
いつの間にか俯いていた顔を、俺はゆっくりと上げる。
それから、苦笑いを浮かべて、もう一つ言葉を紡ぎ出す。
「もし取られたら、奪ってやろうかな…なんて思う」
「取られる前に、俺は取りたいけどな〜」
「略奪愛か!?以外とるぅって激しいんだなあ!!」
今すぐ、追い掛けて奪ってやりたい。
でも、まだそんな事できないんだ。
ようやく気持ちを認めても、衝動的には動けなかった。
ただ今は、ももが帰って来る事を待つ事でしか、俺は他にできる事がない。
そして、どうか1人で帰って来る事を、祈るしかなかった。
だから、もしもの事を考えた時、奪ってやると言う事が真っ先に浮かんだ。
余裕をかましてる訳なんかじゃない。むしろ、その逆だ。
俺の恋は、始まったばかり。
いきなりハッピーエンドだなんて、考えてる訳じゃない。
いつか絶対に、気持ちを伝えよう。
そう、コイツらのお陰で、決心できた瞬間だった。