**confection**
どれくらい時間が経っただろう。
校内に人影はなく、校庭からの部活動をする人々の影が長くなり、教室の中までかけ声が響いてくる。
紅く染まりだしたグラウンドと、校舎。
茜色の空には、雲一つない。
龍雅が大きな欠伸をした時、廊下に足音が響きだした。
「…帰って来たんじゃね〜?」
欠伸をしながら言う龍雅の言葉に、体中に力が入る。
と言うよりも、まるで構えているように。
永遠にも感じられる程、ももが現れるまでの時間が果てなく感じる。
そんな中、ふとある事に気付き、微かな期待感に胸が高鳴りだす。
聞こえてくる足音は、1つだけ。
そして間違いなく、男ではなく女のモノだ。
早く帰ってきて欲しい気持ちと、時間が止まればと言う気持ちが、ごちゃごちゃと入り乱れる。
まず、なんて声を掛けようか。
どんな顔をしていればいいか。
握り締めた拳がしっとりして、鼓動が頭に響いてくる程だ。
じっと見つめた先に、開け放された教室のドア。
そこに、待ち望んでいた姿が現れた。
「うわぁ…び、びっくりした……」
「おっかえり〜♪遅かったなあ!!」
「え…待っててくれたの?」
本気で驚いたように、ももが一瞬後ずさりした。
でも、俺らと分かると、ホッとしたように柔らかく微笑む。
そんな姿に、胸が余計に暴れた。