**confection**
a name
真新しい制服に身を包み、コンクリートの建物を見上げる俺の頬を、まだ少し肌寒い風が撫でている。
田舎から出てきたばかりで、右も左も分からない。
自分と同じ制服を着た人間が、たくさん居る。
んげぇ……人間だらけ。
どっからんな湧いてくんだ。
浮かれ立っているような、少し緊張に頬を上気させる人でたくさんだ。
清陵高校。
今日から三年間通うことになる学校に、少しだけ胸が高鳴っていた。
田舎モンだとなめられたくなくて、でもかと言っていきなり呼び出しを食らうのもなんなので、中学からのまんまスタイルでやって来た。
……あれ?何か…めちゃくちゃ浮いてねえ?
「…ちっ。んなチラチラみんなよ」
これだから…都会は嫌いだ。
ちょっと変な奴とか居ると、伺うようにチラッチラと。
赤の他人だからこそ、興味が沸く。
全く付き合いもなく、顔も性格も知らない人間だらけだから。
いろんな顔。体。声。香り。
自分と違っていて、尚且つ飛び抜けるようにどこか一つでも目立っていると、異様な目で遠慮がちに、でも見たくて仕方ないような顔して見てくんだ。
そんな視線もうざいんだよ。
田舎はいいぞ。
……ほぼ知り合いだからな。
まん丸に膨らんだ桜の蕾が、暖かい春を待ち望むように俺の頭上で枝を広げていて、それをくぐるように門を通り抜けた。