**confection**
ガラッとドアを開けると、何やら俺の席の近くに人だかりができている。
何だ?と思いながらも、自分の席はそこしかないのでゆっくりと歩み寄った。
まだ、龍雅と宗太も来ていない。ついでに俊も。
まだ時間には少し余裕はあるし、遅刻ではないだろう。
そんな事を呑気に考えていた俺に、昨日の体育館での出来事がふと蘇る。
「…………」
何だかモヤモヤする。
よく見ると、人だかりは俺の席の隣…………。
『美人じゃね?彼氏いるのかなぁ………』
そんなセリフが頭の中に蘇る。
結局名前なんて思い出せないまま、そう言った奴のうっとりしたような声が耳に残る。
近付く前から、予想通りのセリフが飛び交い、耳を通り抜ける。
イライラする。
何でこんなにイライラするのかが自分では分からないけど。
「ねね、携番教えてよ〜」
「えっ…」
「あー俺も!!いいじゃんクラスメートなんだからさぁ♪」
「いや、その…」
「……おはよう」
朝の挨拶は大切です。
おはようと声を掛けた俺に、そこにいる全員が一斉に振り返った。
「あ、るぅちゃんおはよ」
予想通り、心底困ったような表情をしたももが居て、俺の言葉にホッと表情を崩した。
「お、おはよーす」
「…るぅ…ちゃん?」
周りにいたクラスメートらしい男子が、何故か怖いモノでも見るような顔で俺を見て挨拶をそれぞれしたり、そんな事を言っている。
「おはよ。るぅちゃんですが」
何か文句でもあんのか。
「あ…はは…は……」
思い切り引きつった笑いが、クラスメートから溢れ出した。