**confection**



気付くと、思い切り眉間に皺が寄っていた。


やばいやばい。睨んでる訳では…睨んでいたのか。俺。


よく地元のツレに愛想が悪い顔。と言われていた。




眉間に皺が寄ると、普段から愛想の悪い顔が更に愛想が悪くなり、最悪らしい。


慌てて瞬きを繰り返すように誤魔化して、眉間の間の力を抜いた。


「あ、ねえるぅちゃん!!ちょっと付き合って」


「ん?うん」



男子を避けるようにして立ち上がったももは、抜け出すと俺の腕を掴み、小さな体でグイグイと俺を引っ張った。


そんなももに、ドキッと胸が大げさに反応した。



まただ……苦しい!!



引っ張られるがまま素直に付いて行くと、クラスのすぐ横にある、ほとんど使われない階段まで連れて来られた。



クラスの前の長い廊下の先の階段は毎日使うけど、この階段はめったに使われないらしく、頻繁に使われていた様子もない。


そして、生徒の気配は全くしなかった。


そんな事を考えていたら、ぐいぐいと俺の袖を掴み、引っ張ってきた小さな手が離れた。


何だか無性に寂しく思い、掴まれていた袖と、ももの小さな手を見比べた。



何だろう。やっぱり心臓が痛い。


もものそばに居るだけで、その痛みはどんどん増してきているような気がする。



「るぅちゃん…ありがと」


「え?あ、いや?」



心底疲れたように言うももに、本当に困っていたんだと簡単に想像できた。


何だか感謝された事が、物凄く嬉しく感じる。


何だろう……この感じ。



生まれて初めて感じた感覚に、心地よさを覚える。


それと同時に、戸惑う。



この感覚を、どう処理すればいいのか分からなかった。
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