**confection**
ポツリと独り言のように呟かれた言葉に、ももを見下ろした。
その瞬間、アホかと思う程、俺の心臓が跳ね上がる。
何だか無表情に…いや、何だか切なげで、悲しそうな…そんな目をしたももに、釘付けになる。
いつか見た、あの何も感じ取れないような、冷たくも感じてしまうような表情。
どうしてそんな顔をするのだろう。
ももの目線は、てっきり美春達を捉えているものだと思っていた。
でも、見つめるももは、何か遠い物を見るように、窓の外を見つめていた。
こんな名門で名前の知れた高校に、首席と言う成績で入学したもも。
でも、それを変に着飾る事もなく、鼻にかける訳でもなく、むしろとても好感の持てるももに、あっと言う間に群がる輩が現れた事は言うまでもない。
いかにもな根暗な奴ならまだしも、飛び抜けて目を引く容姿ときたら、頭うんぬん除いても、それは安易に予想できた。
頭脳明晰。容姿端麗。気にならない奴なんて、居ない訳がない。
何でもそつなくこなしてしまうようなももが、こんな表情をする意味が分からなかった。
何でこんなにも、苦しそうな顔するんだよ。
「美春が羨ましいのか?」
それとも、離れてしまうようで、寂しいとか?女って、やたら群がりたがるし、1人になりたがらないし。
「うーん。まあ…確かに羨ましいかな…。私には持ってない物、美春はたくさん持ってるから」
「持ってないモノ…?」
笑っているようにみえて、自嘲的に笑うももに、胸がギュッとする。
何でそんな顔すんだ…?
何でそんな…追い込まれてるみたいな顔…するんだよ。