**confection**




あんな悲しそうな顔をしたり、こんな風に笑ったり、どれが本当のももなのか分からなかった。


知りたくなった。



何もなかったように、美春と俊を見て再び話をするももから、目が離せなかった。



小さな顔に、意志の通ったような綺麗な眉。笑うと少しそれが垂れて、大きなキラキラの黒目がちの瞳なんか、長い睫毛のせいか細められてタヌキみたいで。


小さな筋の通った鼻に、ピンク色の柔らかそうな、形の綺麗な唇。


触れたい。そう思った。




今まで、自分からそんな気持ちになんて、なった事なんてなかった。


好きと言う感情を、生まれて初めて知った。



こんなにも、相手を欲しくてたまらなくなるなんて、初めてだった。



俺は今まで、恋愛ではない『何か』をしてきていたんだ。


あれは…何だったのだろう。



疑似恋愛…??




「ねえるぅちゃん?」



自分の思考に没頭していた中、ふと掛けられる甘い声。



視線を向けるとそこには、キラキラとした宝石のような瞳が、俺を映している。


吸い寄せられてしまいそうな赤い唇に、 簡単に欲情できた。



なるほど。恋は風邪の諸症状に似ているのか。


危うく本気で病院に行く所だった。



でも、俺の頭の中を見さえすれば、脳内物質の異常な分泌で、恋の病と診断してくれたのかもな。


んな医者居るワケねえけど。



「どうしたの…?やっぱ何か変だよ……?」



「え!?…あ、ゴメンゴメン。ちょっとぼーっと…」



「しすぎだから。やっぱり体調悪いんじゃない?保健室行く?」



危険だ。いろんな意味で危険すぎる。


俺は何としても、保健室行きを阻止しなければならない。
< 47 / 249 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop