**confection**
あんな悲しそうな顔をしたり、こんな風に笑ったり、どれが本当のももなのか分からなかった。
知りたくなった。
何もなかったように、美春と俊を見て再び話をするももから、目が離せなかった。
小さな顔に、意志の通ったような綺麗な眉。笑うと少しそれが垂れて、大きなキラキラの黒目がちの瞳なんか、長い睫毛のせいか細められてタヌキみたいで。
小さな筋の通った鼻に、ピンク色の柔らかそうな、形の綺麗な唇。
触れたい。そう思った。
今まで、自分からそんな気持ちになんて、なった事なんてなかった。
好きと言う感情を、生まれて初めて知った。
こんなにも、相手を欲しくてたまらなくなるなんて、初めてだった。
俺は今まで、恋愛ではない『何か』をしてきていたんだ。
あれは…何だったのだろう。
疑似恋愛…??
「ねえるぅちゃん?」
自分の思考に没頭していた中、ふと掛けられる甘い声。
視線を向けるとそこには、キラキラとした宝石のような瞳が、俺を映している。
吸い寄せられてしまいそうな赤い唇に、 簡単に欲情できた。
なるほど。恋は風邪の諸症状に似ているのか。
危うく本気で病院に行く所だった。
でも、俺の頭の中を見さえすれば、脳内物質の異常な分泌で、恋の病と診断してくれたのかもな。
んな医者居るワケねえけど。
「どうしたの…?やっぱ何か変だよ……?」
「え!?…あ、ゴメンゴメン。ちょっとぼーっと…」
「しすぎだから。やっぱり体調悪いんじゃない?保健室行く?」
危険だ。いろんな意味で危険すぎる。
俺は何としても、保健室行きを阻止しなければならない。