**confection**
「全っ然元気だし。心配しすぎ」
「え〜?…そお?」
疑わしい目つきで、それでも心配そうに俺を見つめる瞳に、思わず口元が緩そうになり、グッと堪える。
あんまりヘラヘラして気持ち悪がられても嫌だし。
「ならいいけどね」
ようやく納得してくれたももに、ホッと胸を撫で下ろす。
ここで強制的にでも保健室なんかに連れてかれたら、きっと今まさにももに熱い視線を向けている奴らに、ももは囲まれるに違いない。
何となく俺がそばに居る事で、それが阻止できているようなので、なおさら離れたくなんてない。
それに、少しでも今の状況で、ももと2人きりになんてなってしまったら、きっと俺が耐えられない。
好きって意識した瞬間から、自分自身知らなかった自分を知った。
こんなにも臆病になるなんて、思ってもみなかった。
「どうなるかなあ…あの2人」
「意外と上手くいくかもな」
人の恋路なんて、興味はないのが本音。
でも、美春はももの幼なじみ…って訳でもないんだけど、見守っていきたいと素直に思った。
不思議な感覚だった。
きっと今まで、人を好きになるなんてなかったせいか、恋だの愛だの、どうでも良かった。
恋をすると言う感情を知った俺は、少なくともその気持ちが分かるようになったせいなのか。
でも、人を好きになった所で…いや、俺には気持ちを伝える術も、更には人を好きになる権利なんてないのかもしれない。
ここにやって来た理由。
ここまでして来たかった理由。
何となく気持ちが沈むようで、思わず溜め息を漏らした。