**confection**
caution
別に興味のない話に、俺はボーッと自分の思考に入り込む。
左側から感じる彼女の存在に、思考の渦に飲まれてしまう事なんて簡単だった。
次々と進んでいく自己紹介。
笑いを取ってみたり、色目を使ってみたり。
本当に人間って、面白い生き物だ。
異性を目の前に、更にそれ程馴染んでもいない今だからなのか、自分の評価を上げるために取り繕う姿が滑稽な奴らまで居る。
そんな時間が、俺の自分の気持ちを考えると言う時間としては、とても有り難い時間となった。
それでも、龍雅や宗太、俊の自己紹介は、きちんと意識を現実へと戻した。
神崎龍雅(カンノザキリュウガ)
龍雅は相変わらず、彼女募集中から始まり、彼女募集中で締めくくると言う何とも龍雅らしい自己紹介で、それでもその整った容姿には、女子も見とれているようだった。
龍雅は、その辺の男なんかと比べてしまったら、逆にその辺の男の方が可哀想に思えてしまうだろうと言う程、同性でも素直にカッコ良いと思ってしまうようなルックスの持ち主だ。
背は俺より低いが、断然高いほう。
少し短めに整えられた髪は、サラリと清潔感もあり、とても似合う淡い茶。
魅惑的な二重の瞼の瞳は、映す物をキラキラと捉え、相手の瞳をじっと見つめ、まるで意志を読まれてしまうようだ。
こう言っちゃ何だが…モテない訳がない。モテないフリをしているつもりらしいが、かなりの遊び人だろう。
そして、かなり頭の切れる奴だ。
要するに、計算高い。と言う事。
あの宗太と一緒に居る事だし、かなり人を見ている事。
ふと、龍雅と視線が合うと、意味深にニヤリと笑われた。
……やっぱり、宗太同様、コイツにも隠し事はできない自信が持てた。
同性なのにドキリとするその魅惑的な視線に、俺は思わずグッと唇を噤むしかなかった。