**confection**
ただ視線が合っただけなのに。
ただももが笑っただけなのに。
何もかもが初めてだらけで、これからどうリアクションすればいいかも分からない。
当然、固まるしかないんだけど。
そもそも、まず俺の目の前には、ズラリと並ぶ他のクラスメートが居る訳で。
俺の視線からでも、龍雅の頭が入る訳で……。って、…奴か?
あいつがももに何かをしていると考えれば、何となく納得してしまうんだけど。
いや、もしか…やっぱり俺に対して?
いや…でも……って、エンドレス。
こんな些細な出来事さえも、頭をフルに使う程悩んでしまう。
俺ってどうしようもない程単純だ。
「これからクラスの仲間として、よろしくお願いします」
当たり障りのない、そんな挨拶さえも、ももが言葉を紡ぐだけで違って感じてしまう。
頭の中身の違いなのか。
ももだからなのか。
「質問〜。彼氏は居るんですか〜?」
その時、そんな空気を引き裂くような男子生徒の声。
今までそんな質問なんて無かったはずなのに(俺のは例外だろう)、突然の事に弾かれるようにして声の主へと視線を向けた。
場所は、龍雅の席の近く。
名前は…自己紹介では見ていたが、もちろん覚えてなんかいなかったけれど、何だか目立つ印象のある奴だった。
比較的教卓からは近い場所で、自然と他のクラスメートの視線が2人を行き来する。
頭を下げて顔を上げた直後のももが、ピタリと動きを止める。
少し戸惑っているようにも見えるが、無理ないだろう。
質問が質問だ。
「え…?か、彼氏ですか?居ません…けど…」
おずおずと答えにくそうに言うももが、ほんのりと頬を赤く染める。
そんな姿まで…俺を釘付けにする。
いや、間違いなく、プリンと脳内にメモリーした奴らまでも。
うん…これって前途多難?