**confection**
とりあえず教壇に登り、黒板の前に並んでみる。
ふとももを見ると、どうやらどこに落ち着けばいいのかさえ迷っているらしい。
そんな動きが小動物のようで、思わず笑ってしまう。
「よーし、いくぞ〜」
宗太の声を合図に、デジカメからテンポ良く電子音が鳴る。
素早く俊の隣に居た龍雅の横に宗太が並ぶと、龍雅にあっと言う間に肩に腕を回されている。
美春と俊と言えば、仲良く手なんか繋いでいる。
あーもう。早くしねーとシャッターがおりちまうだろう。
思わずそう思った俺は、ももの腕を掴んでいた。
一瞬驚いたように目を見開いたももを、フラフラとしたまま美春の隣に立たせる。
キョトンと俺を見つめるももに、俺は気のないフリをしてももの肩に腕を乗せた。
「ほれ、ももちゃん笑って」
自分からしといて何だか、近すぎるももの顔にドギマギしてしまう。
こんなに近くで顔を見てしまうと、やっぱり俺のチキンハートがドクドクと暴れ出す。
そして、ふわりと香る、ももの甘い香り。
香水か?と思った所で、これはももの自然な香りなんだと気付き、更に鼓動は加速する一方。
めっ…ちゃ良い匂いすんだけど。
なにコレ。シャンプー?
って…反則だろオイ。
「るぅちゃんこそ…笑いなよ。変な顔っ」
よっぽど動揺する俺の顔が変だったのか、ももが笑う。
「ももの顔よりはマシ。俺じゃなくてカメラ見ろよ」
「面白すぎて笑えちゃう」
あーあ。ダメだ俺。
ももと居ると、調子を狂わされっぱなしだ。
笑うももにつられるように、俺まで笑えてきてしまう。
カメラのレンズを見た途端、一瞬だけ白くなる世界。
そんな中でも、ももの笑顔が脳裏に焼き付いて剥がれなかった。
そして、どんな写真ができるのか、少し楽しみに思う自分が居た。