**confection**




握り拳なんか作って、俺を見上げる姿に、思わず頬の筋肉が緩みそうになるのを、ぐっと堪えた。



「ああ…うん。よろしく頼むな」



「うん。るぅちゃん足早そうだね」



「…逃げ足ならね」




他愛もない会話に、何だかももを独り占めしてるようで気分が浮かれる。


それにしても…アイツ…俊は、ひょっとして俺の気持ちに気付いて……。



「唯ノ瀬、俺のも計ってくれる?」



その時、俺の背後から掛けられる聞き覚えのある声。


一気に嫌な感覚が胸を覆い尽くし、モヤモヤとしだす。



この声は……。



「栗本君?うん、いいけど…」



「そうか。ありがとう」




出た。毬栗ヤロー。


少し戸惑ったようなももに、ニコニコと近付くイガグリ。


チャラそうな身なりに、思わず眉を潜めてしまう。


なんと言うか、ホスト風ないでたちで、どうしても俺とは合わない気がしてならない。


とゆーか…向こうがやたら俺を意識している事が、ひしひしと伝わってくるようだ。



「あの…頑張ってね」



「ああ、応援しててくれな?」



「え?あ…うん」



溶けてしまうような甘い笑顔で、ももに微笑みかけるイガグリ。


きっと他の女子なら、頬なんかポッと赤く染めて、俯いてしまうんじゃないかと言うような笑顔。


でも、ももはと言うと、そんな状況に戸惑っている様子だった。



あんのヤロー…ももに色目使いやがって。



そして、俄然やる気を無くしてしまう、そんなダメな俺だった。



「松風と唯ノ瀬って、仲良いよな?」



そんな風に、にこやかに言った栗本の言葉に、何だか裏を感じた。
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