**confection**
「ちょっ…私困る…」
「よ〜し、じゃあ男子からいくぞ〜!!スタートラインに並べ〜!!」
ももが言葉を言い切る前に、担任の声によって遮られてしまう。
そんな担任を、恨んでしまう俺。
もっと早く…もっと早く始めてくれてたら……。
こんな堂々と人前で告白しちゃう奴…俊と合わせて2人目だ。
都会はやっぱり…進んでる。ってオイ、んな事考えてる場合じゃねえ…そうじゃねえ…そうじゃねえんだよ……。
「じゃあ行こうか、松風?」
「…………あぁ」
たっぷりと溜めて返事をしたものの、胸糞わりーったらありゃしない。
戸惑うように視線を右往左往させるももが、何だか泣き出してしまうんじゃないかと思わせる程、動揺しているのが分かる。
そんな事考えてる俺も、めちゃくちゃ動揺しちゃってるワケで。
俺に声を掛けておきながら、さっさと自分だけ行ってしまうイガグリに、動揺が苛立ちへと様変わりする。
でも、どうしていいのか分からないのか、身動きが取れない様子のももに振り返った。
「もも」
「う…うん?」
誰にも渡したくない……。俺だけ見ていてほしい。
言えたら、どんなに楽だろうか。
「俺、もものせいで走る気無くした…」
「へ!?なんで私のせい!?なんにもしてないじゃん!!」
ようやくももらしい口調に戻り、ふっと頬が緩む。
本当に、いちいち反応が素直すぎんだよな〜。
「だから、俺だけ応援しとけ。俺がサボらず走りきれたら、お礼にプリン買ってやる」
そう言って、ももの頭をくしゃりと撫でた。