**confection**
「よーし、位置について」
何でだろう。
この瞬間、いつもアドレナリンが無駄に出ているようで、ドキドキする。
でも今回は、今までやって来たリレーや何かとは違う気がする。
相変わらず、隣に並んだ龍雅に絡まれていたが、担任のそんな声にようやく落ち着いた。
あぁやっぱり、モヤモヤしてたまんねえ。
校庭の隅々まで、高い笛の音が鳴り響く。
空に響くような、意識をハッとさせるような担任が吹いた笛の音は、一瞬にしてそんな意識を飛ばした。
「るぅー!!頑張ってー!!」
軽く駆け出した所で、掛けられた声援。
他の声援に混ざっても、聞き分ける事ができる程で。
思わずやる気が出てきてしまうような、よく通る少し幼いももの声だ。
「プリンー!!!!」
そして、思い切り躓きそうになる。
大人なのか子供なのか……。
モノで釣られるももって、どうなんだ…。
ま、モノで釣った俺もたいして変わらないけど。
きっと今頃、俺をプリンに見立てて応援しているに違いないももの思考に、気分が軽くなる。
軽く小さく手を挙げて応えてみたら、再びプリンと叫ばれた。
俺はきっとこの先、プリンを超える事はできないだろうと確信した。
主席で入学した程の実力があるのに、一体ももの頭の中の構造は、どうなっているのだろうか。
少し肌寒い空の下、好きな女に見られていると言う意識の中のせいか、予想以上に足は軽かった。