**confection**
持久走も終盤に差し掛かり、気が付くと初めは固まって走っていた集団が、バラけて結構な差が出ている。
もちろん、俺なんかが先頭集団に居る訳もなくて、それでも順位は前からの方が断然早いだろう。
体力には今は自信がないが、運動神経になら自信がある。
少し横腹が痛いが、結構良いペースだ。
あ〜しんどい。しんどい〜。
喉が呼吸により乾き、唾さえも飲み込み辛い。
女子の声援が、グラウンド内に響き、溶け込む。
前方を何となく見ると、イガグリが目に入ってきた。
頭の中で、自分の状況を確認する。
周回遅れの奴も居る中、何とか先頭集団の後に続く俺は、栗本を抜いたのか、抜かされたのか。それとも同周なのか。
頭まで酸素が回る余裕があり、安易に結論が出る。
男は変な所で、闘争本能が発動されるらしい。
変な負けず嫌い。正に俺にピッタリな言葉だろう。
ペースを上げて、栗本を目指す。
俺の計算からして、もうあと一周で終わりのはずだ。
ラストスパートでもかけとくか。と言う結論に辿り着き、同時に早く終わらせたいとも思う。
周りはもう既に限界のようで、ペースも遅く安易に順位は上がる。
…なんだ。俺ってまだまだ体力あるじゃん。
とにかくもう、今すぐにでも止まりたいんだけど。
でも、そんな訳には行かない。
そんな事を考えている内に、俺は簡単に栗本を抜かしていたのだった。