**confection**
「……え〜〜……」
抜いた途端、背後から漏れる弱々しくも息の荒い声。
イガグリだ。
追い付かれるか?とも思ったが、そんな気配すらしない。
勝手な予想ではあるが、きっとももが居る手前、前半に張り切りすぎたのだろう。
俺はと言うと、やる気もなく自分のペースで走っていたせいか、まだ結構な余裕すら感じていた。
予想外に、簡単に先頭集団にも追い付いてしまい、それすら簡単に追い越す。
ラストのせいか、女子からの声援も大きくなり、すぐ真後ろに沢山の足音を耳にする。
これで終わり…あと少し…。
少しの距離が、長く感じる中、最後の力を振り絞る。
順位やタイムなんかはどうでも良くなって、とにかく今すぐ倒れ込みたい。
そう考えている間に、俺はゴールを踏み切ったのだった。
ラインから外れるようにして、歩きながら肩で息をする。
汗がどんどん溢れてきて、思わず着ていたシャツをめくり上げるようにして汗を拭った。
「どぅあ〜…あちっ…はあ…しんど…」
「るぅちゃんお疲れ!!すごいすごい!!一番だよ!!」
「…え?…ちょっとま…はあ…」
大きな独り言に、背後から元気なももの声に振り返る。
喋りたくても、息が上がってまともに言葉を吐き出せない。
体の内側から熱を発するように、全身が熱くて汗が噴き出してくる。
こんなに真面目に走ったのは……何年ぶりだろうな……。
にしても……しんどい。