**confection**
押し返そうとする俺の手を、ももがギュッと握ってそれを止める。
思わずドキリとして、衝動的にそれを見つめる。
小さな手が、ギュッと俺の指を握り締めていた。
「私が戻ってくるまで、ちゃんと汗拭いて待ってて」
そう言いながら、タオルを俺の額に押し付けたももに、俺の心臓が暴れだす。
目の前の近すぎるももの顔に、再び早くなる鼓動。
ついさっきまで走っていた事なんて一瞬で吹き飛んでしまい、なんて俺の心臓はタフなんだと自分で関心すらできてしまう。
思わず押し付けられたタオルを手で押さえると、満足そうに立ち上がったももが、ストップウォッチを確認しながら、そのまま栗本へと向かって行った。
…ほら見ろ。やっぱり抜けてんじゃねえかよ。
自分の容姿や行動になんて、まるでとんちんかん。
俺がどれだけ、ももの言動にドギマギさせられているかなんて、全くもって気付いてなんていないんだ。
それどころか、周りはどんだけ迷惑を掛けられているか……。
「ちゃんと応援してた?」
「え!!う、うん。してました」
ここからでも聞こえてくる栗本とももの会話に、胸のモヤモヤが復活だ。
やっぱり面白くなくて、思わず口元にもものタオルを当てて埋めた。
ふわりと香る、清潔な香り。
ももの甘い香りと同じで、胸がギュッと苦しくなる。
あぁぁ〜〜……俺って重傷?相当痛い?痛てぇよなあ……。
そんな俺の考えをよそに、続々と走り終えた奴らが帰ってくる。
興味もなくチラリと眺めていると、宗太と龍雅、そして俊も帰ってきた。
多分、五歳は間違いなく年をとった、そんな顔をした龍雅と宗太を、俊が余裕の笑みで笑ってみていた。
あいつら、サボったな。特に俊が。