**confection**
「るぅ…はあ…早すぎ……おえっ」
「だってコンパスの長さが違うし」
龍雅の、嘔吐してしまうんじゃないかと思わせるような言葉に、息の乱れないままの俊が答える。
コンパスの長さの問題じゃないような気もするけど…体力の問題じゃねえのか…?
「俊サボっただろう」
「え?無理は良くないし」
「そうですね〜…」
マイペースと言うか何というか…。
やけに大人しい龍雅と宗太を見ると、完全にバテている様子だ。
そんな様子に、ペアになった女子が近付き、笑いながらもタイムを伝えている。
さすがの龍雅さえも、いつものプレイボーイっぷりを発揮する気力もないらしい。
「るぅ、アレ…いいの?」
「アレ?」
何の気なしに、俊の指差した方へと顔を向け、思わず一点を見たまま身動きを止めた。
座り込んだ栗本に、腕を掴まれて困ったように苦笑いをするももは、周りを気にするようにして腰が引けたままチラチラと見渡す。
ブッチン。
そう、音が聞こえた気がした。
気が付くと、勢い良く立ち上がり、真っ直ぐに栗本とももの元へと向かおうと足を踏み出していた。
「はいはいはいはーい、スト〜ップ。落ち着けよ、俺が行く」
「…なんで」
「まさか喧嘩でもする気か?その顔」
「…顔は生まれつきだ」
途端に掴まれた腕に振り返ると、柔らかく笑った俊が俺を止めたのだった。