**confection**
昔から、喧嘩っ早かったとは思う。
でも、こんな感覚は初めてだ。
何とも言い表せない感覚と、俊の言葉に肩から力を抜く。
付き合ってる訳でもねえのに。
ただの友達なのに。
俺がしゃしゃり出ていく所なんかじゃないんだ。
「ここは俺に任せとけって。るぅはとりあえず、落ち着け」
何も言い返す気もなく、チラリと俊を一瞬見る。
やっぱ俊にもバレバレってか。
本人には伝わらないのに、どうしてこうも周りにはバレるんだろう。
向け場のない怒りに、どうする事もできずに座り込む。
手に持ったままのもものタオルを、両手でギュッと握り込んだ。
あ〜…俺って相当ガキだな。
ちっせえ男すぎる。
何やら会話をする声が聞こえてきたが、目を向ける事もなく遠くを見つめた。
まさか俺が、こんな気持ちになるなんて。
言いようのない感情が、頭の中を支配する。
胸のモヤモヤは増すばかりか、止まる事を知らない。
俊が出向いてくれた事で、少しは状況も変わるだろうが、ももの気持ちなんて予想もつかない。
俺とは違って、よく喋るし明るいし、きっと女はあんなのが好きなんだろうな。
ももが好きになる奴だって、きっとそんな奴だ。
その前に、俺は同じ土俵になんて上がれる立場じゃねえ。
何で好きになんてなったんだ?
何で好きだなんて、気付いてしまったんだ?
何で、俺はももと出会ったんだ?