**confection**
たいして無理もしていないはずなのに、こんなにも体調を悪くしてしまう龍雅に対して、少し苦笑いしてしまう。
「普段は疲れ知らずなくらい、うるさいのに」
「同感」
俺の言葉にうなずく俊に、宗太がふわりと髪を靡かせて笑う。
「よーし、次は女子〜!!スタートにつけ〜!!」
その時、担任の声が辺りに響き渡った。
女子の溜め息と共に、歩き出す足音。
「あぁぁぁぁ…やだな〜…やだな〜…」
「お、頑張ってこーい」
「転ぶなよ」
宗太の気の抜けるような声援と、俊の楽しそうな掛け声に、ももが唇を歪める。
長い髪が、サラサラと風に弄ばれている姿が、何だかとても綺麗に写る。
見とれてしまいそうになった所を、俺は慌てて意識を覚醒させた。
「もも、ストップウォッチ」
「あ、そっか」
そう言って、俺に向かって差し出されたストップウォッチを受け取る。
少しだけ触れた指先が、敏感に反応して心臓がドキリとする。
俺…なんか自分が自分で情けない……。
このチキンハートめ……。
それを悟られないようにする事で、俺はいっぱいいっぱいになりながらも口を無理やり開けた。
「ぷ、プリンが待ってるぞ」