**confection**
「お、るぅ!!俺は肉がいい!!」
「あ?」
なにやら雑談していた龍雅が、俺の気配に顔を上げた途端、そんな事を開口一番にのたまう。
目をキラキラさせて、なんとも無邪気な笑顔だ。
「んだよーつめてえ〜。俺はプリンじゃなくて肉でいいからな」
「……あ、そ」
コイツ…。
絶対わざとだ。
面白がって言ってる。
どっかりと腰を下ろし、空を見上げる。
こっちは空が狭い。
窮屈そうに、たくさんの建物がひしめき合い、広い空なんてここにはなかった。
冬の遠い空は表情を変え、暖かな日差しを差す春の香りを届けてくれる。
「聞いたかよ宗太!!るぅがまじつめてー!!」
「なあ俊、あれ美春じゃねえ?」
「えっ、どこ!?…あ、本当だ」
見事に無視されている龍雅を気にとめる事なく、あぐらをかいて座った膝に乗せた、もものタオルに目を落とす。
…――トクン。
締め付けるような胸の苦しさに、眉根を寄せた。
あぁ…ありえねー。
なんだってんだよ…マジで。
なんでこんな気持ちになってんだよ…俺。
グラウンドに目をやると、細い線のももが、爽やかに駆けていく姿が一番に目に入った。