**confection**
「くはーっ、…はあ、疲れた…はあ、プリン…」
上がる息を整えながら、苦しそうに呟くもも。
そんな姿に、チリチリと焦げるように胸が痛む。
思わず頬が緩むのが分かり、ぐっと力を込めた。
「頑張ったじゃねーか」
そう言った俺を、苦しそうに見上げたももに、釘付けになる。
ふにゃんと笑った表情が、あまりにも無邪気すぎたから。
純粋に何の計算も打算もないような、そんな素直さを感じる。
決心したばかりの気持ちが、グラリと揺らぐ。
「約束、守ってよね」
「ん?あ…あぁ」
約束…プリンだよな。
ももの言葉に、素直に嬉しさに気持ちが浮上するのが分かる。
プリン一つでこんなにも喜ぶももに、なんだか適わない気がした。
なんだか視線を感じて、そちらの方へ目を向けると、苦いものが今度は胸に広がる。
俺の視線に気付いたももが、つられたように顔を上げて戸惑ったようにすぐにそらす。
少し気まずそうな顔をして、もじもじと俯く様子に、思わずイライラが募る。
それもそうだよな。
意識しない奴なんていねえ。
何か言いたげにこちらに向いていた視線は、栗本。
意識してほしくなくて、考えてもほしくなくて、何も言わずにいる俺はやっぱり滑稽だ。
『諦めるんじゃなかったのかよ』
と、言う自分がいる。
『素直になっちゃえよ』
そう言う自分もいる。
板挟みされる気持ちは、苦しい程で。
このイライラする気持ちには、どんな意味があるんだ?