**confection**
うーん。どうしたもんかな。
幸せそうなその顔に、俺は頬の筋肉に力を入れっぱなしだ。
むずむずしてたまらないのに、俺にはそれを踏ん張って乗り切らなきゃいけない意地みたいなのがあった。
へらへらしてキモがられてもな。
ってゆーか、不審がられてもな。
それにしても。
「ん。ついてる」
プリンに添えられる生クリームが、お約束のように唇の端についていて、何の気なしにそれを指先で拭う。
そしてそれをそのまま、自分の唇に運んだ。
「あまっ」
珈琲の苦味とは正反対の、柔らかな甘さ。
甘いモノは嫌いではないけれど、珈琲の苦味を直前まで感じていた俺には、甘さが際立つ。
「あ…ありがと……」
キョロキョロと視線を彷徨わせ、もじもじと俯くももが恥ずかしそうにそのまま口を噤む。
え?…あ……。
こういう時、日頃の癖のような物にハッとしてしまう。
俺には、年の離れた兄と姉がいる。
2人は結婚をしている訳ではないから、もちろん子供なんていない。
でも、そのツレ…友達が連れてくる子供の世話を、何故か押し付けられた事が度々あった。
そう。その時身に付いてしまった、癖。
「あ、いや…その……」
……。
自分でしといて、ましてや無意識だったとはいえ、恥ずかしすぎる。
ガチガチになるしかない俺は、多分今まで生きてきた中で、今こそ一番恥ずかしさで死ねると思った。