**confection**
何気なく繋いでしまった手は、タイミングもなく離す事ができずにいた。
比較的、人通りが多いこの時間帯は、駅が近いせいもあるだろう。
ももが行きたいと言った店があるこの場所は、大きな某有名大学があったりと、学生街になっている。
そんな中、俺たちの通う高校もあるもんだから、連日のように賑やかで華やかな街だ。
だからなのか。
余計に都会に感じてしまう。
市街へ行けば、見上げても先まで見渡せない程の、背の高い駅ビルなんかでひしめき合っているんだけども。
「何見たいの?」
「うん、ちょっと生活用品とか買いたくて」
「生活用品?」
「ん?うん?」
本当は特に買い揃えるモノなんてない。
まだ引っ越してきて間もないもんだから、別に何か切れてしまったワケでもない。
意味が分かってないように、軽く眉根を寄せて不思議そうに俺を見上げたももの表情からは、本当に意味が分かっていないように思える。
「るぅ…一人暮らし?」
「あれ?言ってなかった?」
なるほどね。だからそんな顔してんのか。
まあ…高校生で一人暮らしって、あんまりないかも?と思った所で納得した。
「そうなんだ!!すごいね!!」
「すごい?」
「だって、家事とか炊事とか全部自分でしてるんでしょう?」
「まあ…1人だしな」
確かに、全ての事を自分でやらなくてはいけなくて、面倒な部分は多い。
でもそれも、生活の一部ではあるので、慣れみたいなモノで別にすごい事でも何もない。
「すごいよ〜…。私、何にもできないもん」
「そんな事ねえよ。慣れだ、慣れ」
男の俺でもできるんだから、ももみたいな何でもそつなくこなしてしまう奴なんかは、きっとすぐに慣れる。
「慣れかあ…じゃあ、日頃から料理ぐらいしてなきゃ、壊滅的だね」
……――え?
そう言ったももの瞳が、揺れたように寂しさを放ったようで、何かが引っ掛かった。