あたし、
わたしの親友「まゆ」は、今でも眉毛はないんだ。
そりゃ、わたしもないほうだけど、「まゆ」ってあだ名の彼女は、特別無いように錯覚する。
それでいつだか彼女に聞いた。
「まお、眉毛作ればいいのに」
するとまおは見ていた雑誌から目を離し、こう言った。
「だって…まゆってあだ名のあたしが普通の眉毛だったら、あだ名の意味、なくなるじゃん」
それとも、と彼女は続けた。
「いっそのこと眉毛濃くしてみる?」
きゃはは、と笑う彼女の顔に、海苔みたいな眉毛があるのを想像してみた。
それはまおでもなく、「まゆ」でもない、奇妙な光景だった。
あえなく想像を断念し、ちらりと視線を、「まゆなしまお」に向けると、彼女は既に読んでいた雑誌に集中していた。