-アンビバレント-
ダンッ
曲の最後に実流(みのる)のドラムの余韻が消えたあと
せまいライブハウスは観客の黄色い声につつまれた。
そんな中、あたしはステージの袖で体育座りをして腕の中に顔をうずめた。
「香保(かほ)?そろそろ出番。準備行こ」
「あ、うん。今行く」
控え室に向かいながら
あたしは袖が暗かったことに安心していた。
ステージみたいにスポットライトの当たる明るいところだったら
きっと顔上げたとき、清音(きよね)に見えてた。
あたしが今まで誰にも見せまいとしてきた
あたしの涙が…