-アンビバレント-
「も――実流が来たからあたしたちのムードぶち壊しだよ―」
「ぶち壊しも何もねぇだろ…何のんきにお好み焼きなんて食ってんだよ…」
清音の嫌みたっぷりの言葉も
実流の不機嫌さに比べれば全然かわいいものだった。
「…何にそんなにイラついてんスか?」
なるべく実流をこれ以上怒らせないように
康人が慎重に聞いたのに
その言葉もさらに実流を不機嫌にした。
「怒ってるも何も…デビューしたいやつらの行動じゃねぇだろ…」
「そーだね、ごめん」
これ以上グダグダ嫌な雰囲気になるのを避けたかったあたしは
とりあえず謝ってその場を終わらせた。
昔のあたしだったらむきになって言い返してたんだろうけど
たいてい実流のイライラに理由はない。
相手にするだけ損だ。