-アンビバレント-
「それはね―よ」
「え?」
予想外に実流の言葉に迷いがなかったから
あたしは思わず聞き返してしまった。
「だからそれはね―って」
そう繰り返した実流を見て
あたしはなぜだか息が苦しくなった。
「何でそう言い切れるの?」
「だって…オレを原点に戻してくれるメンバーと場所があるから」
あたしはこのとき
初めてロマスタに
勝てるものが見つかった。
ずっと
実流が認めてくれるものがたった1つでもあればいいと願ってきた。
それがあれば
あたしは実流と離れてからも
自分を見失わないで歌い続けられる気さえした。