-アンビバレント-



プラスチックの容器をあけると


海に行った時に拾ったきれいな貝とか

ピアノの発表会の時の写真とか

きれいな夕焼けの水彩画とか

元カレと買ったキーホルダーとか


たくさんのものたちが顔をだした。


しばらくこの場所には来ていなかったけど

ここに来ると

いわゆる実流が失うのを怖がっていた「初心」ってやつが


心に染みるように分かる気がするんだ。



しばらく容器を眺めていたあたしは

ふと今日来た理由を思い出してポーチから小さなハサミを取り出した。




それを左手の手首にもっていくと

静かに左手首についているミサンガを切り出した。



< 54 / 110 >

この作品をシェア

pagetop