-アンビバレント-
その後あたしは実流の車に乗って
一時間弱かけて実流の家に到着した。
「ねぇ、実流……」
「ん――?」
「あたしが……そばにいるよ?」
「…ありがとな」
急に口を開いたあたしの言葉を
実流の事だからはぐらかすと思っていたのに
素直な気持ちが笑みと共に実流から出てきたことが
あたしも素直に嬉しかった。
兄弟もいなく、小さい頃に母親を亡くしている実流にとって
お父さんは最後の家族だったのに
そのお父さんを失った今
実流がどのくらいの負担を感じてるのかを考えると
あたしが思う不幸なんて
たいしたことないんだと思えた。
「香保?…おいで」
実流の声に
あたしはベッドの実流の隣に入った。
その日は実流に抱かれながら
実流の腕枕であたしは静かに眠りについた。