-アンビバレント-
〔え―…今日はバレンタインという事なのですが…〕
〔はい〕
〔ヒロミさんは誰かにチョコはあげましたか?〕
〔…あ―メンバーには〕
〔本命は?〕
〔ないですね、今年は〕
〔今年はということは…去年や一昨年は?〕
〔あ、でもないです、チョコは…〕
あたしは嫌な予感がして
逃げるように部屋を出た。
心臓がバクバクいって止まりそうだった。
「香保さん?大丈夫ですか?」
数秒後に康人が部屋から出てきた。
「うん、ごめん…ちょっと………でも何でもないから。大丈夫」
顔を上げられなかった。
本当は聞こえていた。
あのテレビ番組の司会者に対するヒロミさんの答えが。