-アンビバレント-



「大丈夫だから部屋に戻ってて。ありがとね康人」


俯いたままあたしは冷静にそう言った。





「きゃ……」


え?


しばらくの沈黙のあと

あたしは康人の実流より華奢なカラダの中にいた。




「もう泣くなよ」



初めてだった。



今まで敬語だった康人があたしにタメ語で話してくるのは。


メンバーなんだからタメ語でいいって言ったあたしを

学年は大切だから敬語の方がいい

なんてバカみたいにマジメぶってたのはどこの誰だっけ?



いつもの気の強いあたしなら

ふざけんな、とでもなんとでも言って

このあたしがもたれかかっているこの胸を押し返せるのに。





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