-アンビバレント-
「泣いてないよ、バカ」
「……そっか…」
しばらくその空間には沈黙が漂って
次第にあたしの足元に落ちる雫の音が響いた。
「……~っ……」
「オレの胸でよかったらいつでも貸すよ」
「……」
何も言えずあたしはただ首を何度も何度も縦に振った。
康人はゆっくりとあたしの顔を持ち上げると
涙を手でぬぐってくれたあと
また俯こうとするあたしの顎を持って上を向かせた。
そのあと
あたしの唇をゆっくりと指でなぞって
あたしの下唇を甘噛みするようにキスをした