-アンビバレント-

Course




「ねぇ、香保?聞いてる?」

「えっ?……あ…ごめん、…聞いてなかった…」


申し訳なさそうに頭をクシャクシャしたあたしに

清音は「やっぱり…」とため息を溢した。



最近あたしはぼーっとしやすい。


『聞いてる?』って

そればかり言われる。




「香保。ミーティング終わったらオレのとこ残れ」

「……うん…」


イライラ気味の実流の声を聞いて

また少しあたしは憂鬱な気分になった。



久しぶりの実流の声を聞いてほんのちょっと緊張したのは

気付かないようにしよう。



なんだか涙が出てきそうになったから

下を向き、下唇を噛んで必死に堪えた。



月菜の視線があたしに刺さる。

きっと心配してくれてんだな。






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