-アンビバレント-
『あっつ……』
熱気に包まれた狭いライブハウスは外よりも蒸し暑くて
あたしは初めて来るこの場所に圧倒された。
『香保!!こっち!!』
いつの間にかあたしの事を『香保ちゃん』から『香保』に呼び変えていた真佳は
あたしの手を引っ張ると馴れたように人波を掻き分けて歩いていった。
真佳が連れてきてくれたのは
ベース側の最前列。
きっとドラマーの実流って人がよく見える位置でもあるんだと思った。
ふと隣を見たときの真佳の顔が
あたしが見たことないぐらいキラキラと輝いていて
人の目って
こんなに輝くもんなんだって思った。